よくある話
学生時代によくある話だろう。
片思いの彼のことを、よく気が利く仲の良い友人に相談していた。
ウジウジしている私を励ましてくれたり、仲を取り持つように協力してくれると言っていた。
そんな彼女から、相談する度に彼の魅力に共感されるようになり、彼女の方から彼の魅力を話されるようになり、最後には恋心を打ち明けられ、結局彼女が彼とうまくいった。
こんなことは、本当によくある話で、よく聞く話なんだけど、それだけ自分の周りでも起こることなんだと実感した。
しかし、私の場合は社会人になって、職場でだから少し違うと思う。
彼女はきっと、学生時代も同じことをしてきたんだろうなと思う。そういう恋愛の仕方なんだろう。
歯止めがきかないんだろう。
私なら、いや、大半の人なら、友人から相談を受けたら、まずそのメンズは自分の恋愛対象から除外される。普通はそうではないだろうか。
でも、彼女は違う。
友人が思いを寄せていようが、恋愛対象からは外れず、むしろ友人から聞かされる魅力を自ら確かめ、思いを巡らせていってしまう。
可哀想な人だなとは思う。
それできっと何人か友人を失くしているだろうから。
それでも彼女は女性として魅力的な人なので、男性からは評判が高い。だからこそ、私も仲を取り持ってくれるという彼女を信用してしまったのだが、彼女は女友達が減ろうが、恋愛事情で幸せな日々を失うことはなかったしこれからもないのだろう。
私たち側の人間は、そんな女性たちに一泡ふかされながらも、なんとか恋愛の波を潜り抜けていかなければならないのだなと、社会人になって痛感した。
感性の違いは恋愛のハードル
私はできる限り自分が良いと思ったものを好きな人にもそう感じてほしいと思います。
多くの人がそうだと思います。
しかし感性というものは強制できるものではなく、また感性の違いほど恋人同士の間を埋めるのが難しいものはないと思います。
私は社会人になってまもなくして当時付き合っていた彼と旅行に行きました。
学生時代と違い、なかなか忙しく二人で会うことが久しぶりだったので、私はとてもその旅行を楽しみにしていました。
私たちはあるお寺に行きました。
とても精巧な細工を施されているお寺で彼は作りに感動していました。
もちろん私も感動し、圧倒されていましたが、私はそこであるものを発見しました。
それは木に開いた大きな穴です。
こんなに大きな穴の開いた木を使っていても何百年も変わらず素晴らしさをたもっていられるお寺はすごいなと思い、この穴すごいね、と彼に言いました。
すると彼はものすごく引いた顔をして、こんなに素晴らしいお寺を見て木の穴に感動するなんておかしいんじゃないのと言ってきました。
その時はそれ以来その話はしなかったのですが、私の中ですごいと思ったことと、彼の感性があまりに違うのが浮き彫りになった時でした。
その旅行が終わると私たちはすぐに別れてしまいました。
彼の方から別れを切り出されたのですが、感性があまりに違うと思ったからと言われました。
その時は悲しくてあんなつまらないことを言わなければよかったと思いましたが、今となっては自分の感性を押し殺して、相手に合わせる恋愛を長く続けることにならなくて、逆に良かったなと思います。