初の手作りの菓子はほろしょっぱい
ほろ苦いという言葉は聞いたことありますが、私と私の娘の作ったクッキーはなんとも「ほろしょっぱい」クッキーだったのです。
それは、初めて娘がクッキー作りの体験した時です。
娘は少し風邪気味で自宅にて休養していました。
すると、娘がどうしても外に遊びに行きたいと言い出し、体調が悪いこと、またほかのお友達に風邪をうつしてしまうことを教え、自宅にいるように説得しました。
その代わり、クッキーを一緒に作ろうと誘うと、「じゃぁ、外に行かなくても大丈夫!」と納得してくれました。
厳重に手を石けんで洗い、マスクを二人でして、二次感染を防ぎ、クッキー作りの開始です。
初めてのことで娘の眼はキラキラ輝いていました。
せっかくなので、材料の重さ量りから一緒に始めました。
小麦粉、砂糖、無塩バター、生クリーム、ベーキングパウダーの名前を教えながら、本当に一つ一つ娘と確認しながら用意しました。
無塩バターを常温に戻す間に私は他の家事を少し済ませていましたが、娘は興味津々でずっと台所で材料をいじっていました。
コソコソ何かしていましたが、私はどうしても二階に干してある布団を叩いて裏返しにしたくて、娘にそのことを伝え2分ほど二階にいました。
すぐに約束通り戻り、常温になった無塩バターを他の材料と混ぜ、冷蔵庫でしばらくねかせ、伸ばした生地で型抜きをしたりトッピングにチョコや干しブドウを乗せたりしました。
もうそれは、娘にとって新鮮な出来事だったようで、今でもこの日体験したことを振り返って話す時があるほどです。
焼いている間もずっとオーブンを眺め、少し冷えたクッキーを二人で試食しました。
「ん?塩っ辛い?」
これが、まず私が感じた第一印象でした。
そして、娘の顔を見ると美味しそうに食べています。
私だけかと思い、もう一つ食べましたが、やはり塩っ気を感じました。
無塩バターを使用したし、おかしい…なんでだろうと私はふと周りを見回しました。
すると、砂糖の横にあった塩の蓋が少し開いていました。
大ざっぱな私の性格でも、さすがに塩の蓋を少しでも開けておくと、塩が固まってしまうのでいつもきちんと気を付けて閉めています。
おかしい…絶対におかしい。
娘をじろりと見ました。
すると、指と指の間に小さなキラキラした白い粒が見えました。
それは娘に料理する前に着せてあげた子ども用のエプロンのお腹のところにも付いていました。
娘に「この白い粉、触った?」と塩の容器を指さして尋ねました。
「しゃわったよ(さわったよ)。だって、おしゃとう(さとう)は甘くておいしいんでしょ?」と言う娘。
私のいなかった隙に自分の指で何摘みか入れ足したそうです。
この貴重な体験は彼女にとって、これから料理好きな女性として大人になれるか決まってしまうのかもしれない…と思った瞬間私は怒らずに、「今流行りの塩クッキー作ってくれたんだ!」と言ってみました。
この時の私の咄嗟の判断であれだけの表現ができたのは奇跡です。
すると、「だから、塩じゃなくてしゃとう!(さとう)」と怒られた私。
もうそれからしばらくはクッキー作りはしないことにしました。