謎のおじさん

中学二年のとき、仲が良かったクラスの女の子に彼氏ができた。
まだ持っている子が少なかったのに、急に携帯電話を持ってきたことで発覚した。
当時の携帯電話はパカパカケータイ全盛期だが、シルバーの色が流行っていて、機種のスタイリッシュさも重要視されるようになった頃だった。

にも関わらず彼女が持ってきた携帯電話は黒の折りたたまない携帯電話で、ウエストベルトに付けられるようなカバーが掛けられていた。
なんかおじさんぽ〜い!なんて言ってたら、本当におじさんと付き合っていた。

おじさん彼氏に持たされたという携帯電話。
私たち世代で携帯を持たされる彼氏なんて考えられないから、どんな付き合いしてるんだ!と興味津々になった。
女子バスケット部に所属している彼女は、足首をくじいて外科に通っていた。

地元の小さなクリニックだが、そこの医者だそうだ。
今考えてみれば20代から30代前半だったかもしれないが、私たちは「医者=おじさん」のイメージだったので、「おじさんとつきあって、しかも携帯持たされるってどういうことだろう」と微妙な雰囲気になって、詳細に聞く気が失せた。

どんな世代であれ「年上キラー」「おじさまキラー」という女子はいると思うが、その彼女はお世辞にも可愛いといえるタイプではなかった。
少女マンガに登場する男の子に本気で恋して突っ走るタイプ。

だから、医者とつきあっているのも妄想ではないかと思ったが、実際にその携帯電話によく電話がかかってきていたので本当だったのだろう。
興味本位で、どんな付き合いだったか聞いておけばよかった。