はにかみ屋のあの子をロックオン

いつも行く社食の調理場には、おばちゃん達にまぎれて一人だけ若い子が居る。
眼鏡をかけて、ポニーテールなのに下のほうにするのがお決まりのようだ。

接客は苦手そうに見える。
でもたまにハニカム顔が可愛い感じで、なんとなく目についてからもう2年くらい経った気がする。

2年も毎日見ていると、突然いなかった日にはこちらが落ち着かないくらいだ。

結婚して6年目の妻からは「お弁当にしたら?」と言われているが、この生活リズムを崩せなくなった俺は「社食で毎日打ち合わせの延長みたいな話をしながら食べてるんだよ!」と、仕事だから!みたいな偉そうな事を言って断っているくらいだ。

今日のお昼時は外が雨だからか社食がすごい人数だった。
列、列、長蛇の列だ。
もう間に合わないかもしれないと思い、諦めて一度部署に戻った。

遅いお昼にはなったけど、2時頃に顔を出したら誰もいない食堂で片付けをしながら「眼鏡のあの子」が泣いていた。
正直ドキっとした。

気付いたら近づきながら左手の指輪を外し、頭を撫でていた。
あの子は顔をあげ、淋しそうにハニカミながら眼鏡を取って涙を拭いた。
初めて見た眼鏡じゃないあの子はとてもキレイだと思った。

俺の身体中に電気が走り、何も言わずに思い切り抱き締めてしまっていたのだ。

彼女はすぐに私に心を開いてくれた。
多分、強引に引っ張られるのは好きみたいだ。
会社から少し離れた場所で会い、車の中では手もつないだしキスも強引にした。

彼女はいつもニッコリ笑っていた。

最悪の出会いから

知り合って4ヶ月。
取引先の営業担当だった彼との出会いは、クレームにより第一印象は最悪で、お詫びしたいからと食事に誘われてから、二人きりで会うのはこれが4回目。
ここ1ヶ月は、毎日のようにメールをしていました。

彼は年末に彼女と別れて、引きずっているらしいと彼の同僚から聞いていたので、私は彼のことをだんだん好きになっていたけれど、気持ちは伝えずにいました。

フラっと入った駅裏のバールは、お洒落な雰囲気でちょっぴりテンション上がってしまい、二人ともいつもよりお酒がすすんでいました。

「もう敬語やめましょうよ」と彼に言われたので、「そうする?」と答えたものの、私はお互い敬語で話す雰囲気も嫌いじゃなかった。

「少し飲みすぎたなー。」店を出て、駅裏のベンチに座って夜風に当たっていると、彼の顔がだんだん近くなってきたので、「このままキスしてもいいけど、あたしは誰かの代わりになるのは嫌だし、数回しか会っていないけど、だんだん好きになってるから…」と伝えると、「誰かの代わり?そんなつもりないよ。確かに酔った勢いでキスしようとしてるかもしれないけど、ちゃんと好きだよ」と見つめられて、私は小さく頷いて目を合わせられずにいました。

翌朝、マンションから出ると彼が立っていて、びっくりした私に、「おはよう。酔いがさめたらちゃんと伝えたくて言いに来たんだ。好きです。僕の彼女になってください」と彼。
私は笑顔で「ありがとう」と言って彼を抱きしめました。

最悪の出会いから最高のパートナーになるなんて思いもしませんでした。